改正特定商取引法(平成29年12月1日施行)の概要

平成28年5月25日に改正特定商取引法が成立し、6月3日に公布されました。

改正法は、平成29年12月1日から施行され、施行日以降に締結された契約に適用されます。

以下、改正特定商取引法の概要を説明します。

 

 

指定権利制度の見直し

指定権利制については、事業者が特商法の規制対象となっていない「権利」の取引だと主張することで規制を免れようとすることが問題となっていました。

高齢者の電話勧誘販売などでは、お墓の利用権、有料老人ホームの利用権、鉱物の採掘権などの各種の「権利」、未公開株や社員権、社債、医療機関債などの債権、仮想通貨や外国通貨など様々な被害が増加しています。

現行法では、これらの取引が訪問販売や電話勧誘販売で行われても、役務・商品には該当せず、政令指定権利でもないから規制対象にならないという運用のため、対応できない状態でした。

今回の改正では、従来の政令指定権利は廃止せず残されましたが、「役務」を幅広く解釈してカバーし、「役務」と位置づけることができない「社債その他の金銭債権」と「会社の株式」や「社員権」等を、従来の政令制定権利と併せて「特定権利」と位置づけることで(改正特商法2条4項)、規制の抜け穴が生じないようにすることとなりました。

特定権利とは、(1)施設を利用し又は役務の提供を受ける権利のうち国民の日常生活に係る取引において販売されるものであって政令で定めるもの、(2)社債その他の金銭債権、(3)株式会社の株式、合同会社、合名会社若しくは合資会社の社員の持分若しくはその他の社団法人の社員権又は外国法人の社員権でこれらの権利の性質を有するものをいいます(改正特商法2条4項)。

なお、会社法その他の法律により詐欺又は強迫を理由として取消しをすることができないものとされている株式若しくは出資の引受け又は基金の拠出としてされた取引は、特商法の適用除外とされています(改正特商法26条2項)。

消費者被害の予防、救済の制度拡充

通信販売におけるファクシミリ広告への規制の導入

通信販売に関して、消費者からの事前の請求や承諾なしにファクシミリ広告をすることが禁止されました(改正特商法12条の5)。

現行特商法では、事前の承諾がない電子メール広告が規制されていたところ、ファクシミリ広告にも同種の規制を設けたものです。

電話勧誘販売における過量販売規制の導入

電話勧誘販売に過量販売解除権が導入されました(改正特商法24条の2)。

訪問販売において規定されていた過量販売規制が、電話勧誘販売にも拡充されました。

消費者は、日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品・特定権利の売買契約、日常生活において通常必要とされる回数、期間、分量を著しく超えて役務の提供を受ける役務提供契約について、契約の申込みの撤回、契約の解除を行うことができることとしました。

取消権の行使期間の延長

改正消費者契約法と同様に、訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供及び業務提供誘引販売取引における取消権の短期の行使期間について、追認することができる時から6ヶ月とされていたのが、1年間に延ばされました。

また、取消権によって契約を取り消した場合には、現存利益を返還すればよいことになりました(改正特商法9条の3、24条の3、40条の3、49条の2、58条の2)。

悪質事業者への対応強化

業務禁止命令制度の創設

次々と法人を立ち上げて違反行為を行う事業者への対処として、業務停止を命ぜられた法人の取締役やこれと同等の支配力を有すると認められる者等に対して、停止の範囲内の業務を新たに法人を設立して継続することなどが禁止されました(改正特商法8条の2第1項、15条の2第1項、23条の2第1項、39条の2第1項ないし3項、47条の2第1項、57条の2第1項、58条の13の2第1項)。

業務停止命令の期間の延長

業務停止命令の期間が最長1年から2年に延ばされました(改正特商法8条1項、15条1項、23条1項、39条1項ないし3項、47条1項、57条1項、58条の13第1項)。

刑事罰の強化

悪質事業者の法違反に対する適切な抑止力を確保する等の観点から刑事罰が強化されました。

不実告知等に対する法人への罰金の300万円以下から1億円以下への引き上げや、業務停止命令違反に対する懲役刑の上限の2年から3年への引き上げなど、刑事罰が強化されました(改正特商法70条ないし74条)。

公示送達制度の導入

特商法上の行政処分は、実務上処分書を名宛人に交付することによって行われていますが、レンタルオフィスやバーチャルオフィスの普及等により所在不明の違反事業者への行政処分の実施に支障を来す場合がありました。

そこで、違反事業者の所在が不明な場合には、処分書を交付するということを一定期間掲示することで、事業者に交付したものとみなし、処分を可能としました(改正特商法66条の3ないし5)。

指示制度の整備

業務停止命令を受けた悪質事業者に対して、消費者利益を保護するために必要な措置を指示することができることを明示しました(改正特商法7条1項、14条1項、22条1項、38条1項ないし3項、46条1項、56条1項、58条の12第1項)。