消費者契約法の改正(契約の取消しと契約条項の無効等を規定)
改正の経緯
消費者契約法について、平成28年3月4日に国会に法案を提出し、同年5月10日に衆議院において全会一致で可決された後、同年5月25日に参議院において全会一致で可決され、成立しました。
その後、同年6月3日に平成28年法律第61号として公布されました。
この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して1年を経過した日(平成29年6月3日)から施行されます。
消費者と事業者との間の情報・交渉力の格差に鑑み、契約の取消しと契約条項の無効等を規定しています。
以下、概要を説明します。
契約の取消し
現行規定では、事業者の以下の行為により契約を締結した場合、消費者は取消しが可能とされています。
- 不実告知(重要事項(契約の目的物に関する事項)が対象)
- 断定的判断の提供
- 不利益事実の不告知
- 不退去・退去妨害
しかし、課題として、
- 高齢者の判断能力の低下等につけ込んで、大量に商品を購入させる被害事案
- 契約の目的物に関しない事項についての不実告知による被害事案(例:床下にシロアリがおり、家が倒壊)
- 取消権の行使期間を経過した被害事案
などがありました。
そこで、改正により、
- 過量な内容の契約の取消し(新たな取消事由)
- 重要事項の範囲の拡大
- 行使期間の伸長(短期を6か月→1年に伸長)
を規定しています。
契約条項の無効
現行規定では、消費者の利益を不当に害する条項は、無効とされています。
- 事業者の損害賠償責任を免除する条項
- 消費者の支払う損害賠償額の予定条項
- 消費者の利益を一方的に害する条項(「一般条項」)
⇒【10条】
(1)民法、商法等の任意規定の適用による場合と比べ消費者の権利を制限する条項であって、
(2)信義則に反して消費者の利益を害するものは無効
しかし、課題として、
- 消費者の解除権を一切、認めない条項の存在(→欠陥製品であっても残金を支払い続ける)(例:「いかなる場合でも解除できません」)
- 上記法10条の①は明文の規定だけではなく、一般的な法理等も含むとする最高裁の判決
そこで、改正により、
- 事業者の債務不履行等の場合でも、消費者の解除権を放棄させる条項(無効とする条項の追加)
- 法10条に例示を追加(消費者の不作為をもって意思表示をしたものとみなす条項)
を規定しています。
詳細は、消費者庁HPをご参照ください。